「社員が育たない」の前に、育つ仕事を渡しているか

「若手がなかなか育たない」

「自分で考えて動いてほしい」

「もっと主体性を持ってほしい」

会社では、そんな話を耳にすることがある。

そこで、教育を充実させようと考える。

研修を受けてもらう。

資格を取得してもらう。

経験豊富な社員に指導をお願いする。

もちろん、どれも必要なことだと思う。

でも、少し気になることがある。

社員が育たない原因は、本当に教育の不足なんだろうか。

例えば、ある社員に仕事を任せる。

作業手順は決まっている。

判断に迷ったら上司に確認する。

問題が起きたら、すぐに報告する。

勝手なことはしない。

品質や安全を守るためには、大切なことだと思う。

でも、その仕事の中に、自分で考えて決める場面はどれくらいあるだろう。

何かを工夫しようとしても、

「今までのやり方でいい」

と言われる。

改善案を出しても、

「それは上が決めることだから」

と返される。

失敗すれば、

「なぜ確認しなかったんだ」

と注意される。

そうした経験が続けば、自分で判断するより、指示を待つほうが合理的になっていく。

そして、しばらくすると、

「最近の若手は自分で考えない」

という話になる。

少し不思議な構造だと思う。

もちろん、何でも自由にやらせればいいわけではない。

失敗が許されない仕事もある。

経験が浅いうちは、細かい指示が必要なこともある。

ただ、仕事の中に考える余地がなければ、考える経験も積み重ならない。

研修で主体性の大切さを学んでも、職場に戻れば、すべて上司の判断を待つ。

それでは、学んだことを使う機会がない。

人が育つためには、知識を与えることだけでなく、その知識を使う場面も必要なのだと思う。

例えば、小さな改善を任せてみる。

進め方を本人に考えてもらう。

判断してよい範囲を決める。

結果だけでなく、なぜそう判断したのかを聞いてみる。

失敗したときも、すぐに答えを教えるのではなく、一緒に振り返る。

そうした仕事の渡し方によって、同じ業務でも得られる経験は変わってくる。

社員を育てたい。

そう考えたとき、研修や教育の方法を探す前に、一度だけ普段の仕事を見直してみる。

その社員は、日々の仕事の中で、何を自分で考え、何を決めているんだろう。

育たない人がいるのではなく、育つ機会が少ない職場になっている。

そんな可能性もあるのかもしれない。

玉井 安行 / ホームポジションデザイナー

南信州を拠点に、小さな会社や経営者の「整理しきれないこと」を一緒に考える仕事をしています。

事業、採用、Web、生成AIなど、テーマはさまざま。でも、すぐに答えを出すのではなく、「そもそも何が問題なんだろう?」というところから考えることを大切にしています。

経営や仕事について、誰かと一度整理してみたいことがあれば、ご相談ください。
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