何かに困ったとき、専門家に相談することがある。
経営のことなら経営コンサルタント。
お金のことなら税理士。
法律のことなら弁護士。
ホームページのことならWeb制作会社。
専門的な知識や経験を持つ人に相談すれば、自分では分からなかったことを教えてもらえる。
それは、とてもありがたいことだと思う。
でも、相談する側が、いつも答えを求めているとは限らない。
例えば、ある経営者が、
「そろそろ人を採用したほうがいいと思っているんです」
と相談したとする。
採用の専門家なら、求人媒体の選び方や募集条件、採用活動の進め方を教えてくれるかもしれない。
もちろん、それは役に立つ情報だ。
でも、その経営者が本当に困っているのは、採用の方法なんだろうか。
仕事が増えて、今の人数では回らなくなっているのかもしれない。
特定の社員に仕事が集中しているのかもしれない。
あるいは、今の事業をもっと大きくしたいという気持ちと、これ以上忙しくなりたくないという気持ちの間で迷っているのかもしれない。
そうだとすると、採用の方法を詳しく教えてもらっても、迷いは残る。
答えが分からないのではなく、何を決めればいいのかが整理できていない。
そんな状態もあると思う。
このとき必要なのは、すぐに答えを教えてくれる人ではないのかもしれない。
「なぜ採用したいんですか?」
「今の人数では、何が困っていますか?」
「人が増えたら、どんな状態になってほしいですか?」
そんな問いを一緒に考えてくれる人。
話しているうちに、自分でも気づいていなかった考えが言葉になる。
最初は採用の相談だったのに、実は仕事の進め方を見直したいのだと気づく。
あるいは、やはり採用が必要だと、納得して決められるようになる。
どちらの結論になってもいいと思う。
大切なのは、相談する前よりも、自分が何を考え、何を選ぼうとしているのかが明確になることだからだ。
ただ、「一緒に迷う」というのは、何も分からないまま悩み続けることではない。
専門的な知識が必要なら、それを使う。
経験から見えているリスクがあれば、伝える。
考え方に矛盾があれば、指摘する。
相手が望んでいる答えと違っていても、必要だと思えば別の見方を示す。
答えを急がないことと、判断を避けることは違う。
専門家が答えを持っていることには、大きな価値がある。
一方で、答えを出す前の段階に付き合うことにも、別の価値があると思う。
特に経営のように、何を大切にするかによって選択が変わる問題では、誰にとっても正しい答えがあるとは限らない。
売上を増やしたい人もいれば、今の規模を維持したい人もいる。
人を増やしたい人もいれば、少人数で仕事を続けたい人もいる。
同じ状況でも、選ぶ答えは違ってくる。
だから、専門家が考える正解を、そのまま相手の正解にしてしまわないことも大切なのだと思う。
相談することで、知らなかった答えを得られる。
それも、もちろん良い相談だ。
でも、相談することで、自分が本当は何を望んでいたのかに気づく。
そんな相談もあっていい。
正解を教えてくれる人が必要なときもある。
でも、まだ何が問題なのかも分からないときには、一緒に迷える人が必要なのかもしれない。
