会社には、
「あの人に聞けば分かる」
という人がいる。
経験がある。
判断が早い。
トラブルにも対応できる。
お客さんのことも知っている。
だから、何かあるとその人に仕事が集まる。
難しい案件を任せる。
新人から質問される。
上司から相談される。
トラブルが起きれば呼ばれる。
確認もお願いする。
できる人だから、
任せたほうが早い。
これは、とても合理的な判断に見える。
実際、その瞬間だけを見れば、
たぶん一番早い。
でも、
それを何年も続けるとどうなるだろう。
その人だけが知っていることが増える。
その人にしか判断できないことが増える。
さらに仕事が集まる。
忙しくなる。
忙しいから、
人に教える時間がなくなる。
仕組みにする時間もなくなる。
結局、
またその人がやる。
こうして、
できる人ほど、会社から抜けられなくなっていく。
会社としては、
頼りになる人がいる。
でも見方を変えると、
その人がいなければ回らない仕事が増えているとも言える。
そして、
本人が限界に近づいたところで、
「属人化を解消しよう」
という話が始まる。
マニュアルをつくる。
情報を共有する。
若手を育てる。
でも、
そのための中心人物は、
すでに一番忙しい人だったりする。
少し不思議な構造だと思う。
できる人に仕事を任せること自体が悪いわけではない。
ただ、
「この人に任せれば早い」
という判断を繰り返すことが、
数年後の会社を難しくしている可能性はある。
本当に強い組織とは、
すごくできる人がいる組織なのか。
それとも、
その人がいなくても仕事が回る組織なのか。
目の前の仕事を早く終わらせることと、
会社が長く回り続けることは、
必ずしも同じではない。
だから、
誰かに仕事を任せるとき、
「誰なら一番早くできるか」だけではなく、
もうひとつ考えてみる。
この仕事を、この人に任せ続けた先に何が残るのか。
