「安くできる」と「安く売る」は、別の話

AIの進化によって、これまで時間がかかっていた仕事を、短時間でできるようになってきた。

文章を書く。

デザインをつくる。

資料をまとめる。

プログラムを開発する。

以前なら何時間もかかっていた作業が、数分で終わることもある。

そうなると、こんなことを考える。

「短時間でできるようになったのだから、価格も安くするべきなんだろうか」

もちろん、作業時間が短くなれば、コストを下げられる可能性がある。

競争力を高めるために、価格を下げるという選択もあると思う。

でも、少し気になることがある。

仕事にかかった時間が短くなったら、その仕事の価値も下がるんだろうか。

例えば、ある会社から業務改善の相談を受けたとする。

これまで何人もの社員が時間をかけて取り組んできたけれど、なかなか解決できなかった問題がある。

その問題に対して、経験のある人が現場を見て、原因を整理し、改善の方向性を示す。

結果として、短時間で解決の糸口が見つかった。

では、その仕事は、短時間で終わったから安いんだろうか。

もし経験がなければ、同じ結論にたどり着くまでに何日もかかったかもしれない。

あるいは、間違った方法を選んで、余計な費用をかけていたかもしれない。

短時間で答えにたどり着けたのは、それまでに積み重ねてきた経験や知識があったからとも考えられる。

時間が短いことは、必ずしも仕事が簡単だったことを意味しない。

これは、AIを使った仕事にも共通していると思う。

AIが文章やデザインをつくってくれる。

でも、何をつくるべきかを考える。

出てきたものが適切かどうか判断する。

必要な修正を加える。

最終的な品質に責任を持つ。

そうした仕事まで、AIが自動的に引き受けてくれるわけではない。

もちろん、AIによって誰でも同じ品質のものをつくれるようになれば、その仕事の市場価格が下がることもあるだろう。

作業時間が減ったからといって、以前と同じ価格で売れるとは限らない。

ただ、ここで分けて考えたいことがある。

つくるためのコストと、顧客が受け取る価値は、同じものではない。

例えば、顧客が求めているのが、見た目の整った資料そのものなら、安く簡単につくれることが価値になるかもしれない。

一方で、顧客が求めているのが、その資料を使って重要な判断をすることなら、情報の整理や構成、内容の妥当性にも価値がある。

同じ資料制作でも、何を提供しているかによって、仕事の意味は変わってくる。

だから、AIによって仕事が早くなったとき、価格を下げるかどうかを考える前に、一度確認してみたい。

自分たちは、何に対してお金をいただいているんだろう。

作業時間なのか。

完成したものなのか。

それとも、その仕事によって顧客が得られる結果なのか。

安くできるようになったことは、良い変化だと思う。

でも、その変化を価格にどう反映するかは、別の判断だ。

利益を増やしてもいい。

価格を下げて、より多くの人に届けてもいい。

品質を高めるために、浮いた時間を使ってもいい。

安くできるようになったから、安く売らなければならないわけではない。

その仕事の価値を、何で測るのか。

AIによって作業の時間が短くなるほど、そこを考える必要があるように思う。

玉井 安行 / ホームポジションデザイナー

南信州を拠点に、小さな会社や経営者の「整理しきれないこと」を一緒に考える仕事をしています。

事業、採用、Web、生成AIなど、テーマはさまざま。でも、すぐに答えを出すのではなく、「そもそも何が問題なんだろう?」というところから考えることを大切にしています。

経営や仕事について、誰かと一度整理してみたいことがあれば、ご相談ください。
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